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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

吉川英治『三国志(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 页

青空文庫

四

「……では、いつか行こう」

お気のすすまない容子ながら、帝は、行幸を約束された。何ぞ知らん、すでに兵車の用意は先にできていたのである。帝は、曹操の我意に、人知れず、眉をふるわせられたが、ぜひなく、

「さらば、劉皇叔も、供して参れ」

と、にわかに詔して、御手に彫弓、金※箭をたずさえ、逍遥馬に召されて宮門を出られた。

今朝方から、曹操の兵が城外におびただしく、禁門の出入りも何となく常と違うので、早くから衛府に詰めていた玄徳は、それと見るや、自身、逍遥馬の口輪をとって、帝のお供に従った。

関羽、張飛、その余の面々も、弓をたばさみ、戟を擁し、玄徳と共に、扈従の列に加わった。

四

御猟の供は十万余騎と称えられた。騎馬歩卒などの大列は、蜿蜒、宮門から洛内をつらぬき、群星地を流れ、彩雲陽をめぐって、街々には貴賤老幼が、蒸されるばかりに蝟集していた。

「あれが、劉皇叔よ」

などと、警蹕のあいだにも、ささやく声が流れる。

この日。

曹操は、「爪黄飛電」と名づける名馬にまたがって、狩装束も華やかに、ひたと天子のお側に寄り添っていた。

その曹操が前後には、彼の股肱とする大将旗下がおのおの武器をたずさえ、豪歩簇擁、尺地もあまさぬばかり続いて行くので、朝廷の公卿百官は、帝の側近くに従うこともできなかった。