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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

吉川英治『三国志(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 页

青空文庫

二

兵事に精通し、兵糧は足り、世間ももっぱら称揚しておるようです」

聞くと、曹操は笑って、

「袁術か。あれはもう生きている英雄ではあるまい。塚の中の白骨だ。不日、この曹操がかならず生捕ってみせる」

「では、河北の袁紹があげられましょう。家系は四代三公の位にのぼり、門下には有数な官吏が多く出ております。そして今、冀州に虎踞して謀士勇将は数を知らずといわれ、前途の大計は、臆測をゆるしません。まず彼など、時代の英雄とゆるしてもいいのではありますまいか」

「ははは、そうかな」

曹操は、なお笑って、

「袁紹は、胆のうすい、決断のない、いわゆる疥癬の輩という人物さ。大事におうては身を惜しみ、小利をみては命も軽んじるという質だ。そんな人間が、いかで時代の英雄たり得ようや」

誰の名をあげてみても、彼はそういう調子で、真っ向から否定してしまうのだった。

二

否定はするが、あいまいではない。

曹操の否定は明快だった。痛烈な快感すら、聞く者の耳におぼえさせる。

玄徳も、その興味につい誘いこまれた。

そうして、当今の英雄について、玄徳が名をあげ、曹操が論破し、思わず話に身がいったせいか、いつのまにか酒席の小亭の前に来ていた。