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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

何という不可解な、そして変現に巧みな男だろう。天地を飛行するとか、神出鬼没とかいうのは、あんな男の事ではあるまいか。

「恐るべき奴が将門に味方している……」

やがて、相互のいい分は、決裂したとみえ、維茂父子は、昂奮の醒めきれない面を硬めたまま、国庁の内へ戻って来た。

「帰りましたな。将門の使者共は」

「じつに乱暴ないいぐさだ。談合でも何でもない」

維茂は、憤然と呟き、為憲は、充血した眼で、貞盛を見ながら、強いて苦笑して告げた。

「矢は放たれたも同じだ。一戦あるのみですよ」

「が、為憲どの。大丈夫か」

「その為に、ここ数ヵ月、兵馬も鍛えてある。奴らに負けをとるものか」

「きょうの使者のうちで、ひとりでしゃべっていた男があったでしょう。あれに油断はなりませんぞ」

「藤原不死人とか、名乗っていたが、あれが何だというのです」

「南海の乱賊、藤原純友とも交わっている人物です。一時は、検非違使の手に捕われて、刑部省の獄中で死んだはずだが、それがまだ東国へ来て生きている……」

「純友の……?」と、維茂父子もその噂は聞いていないでもないが、南海の賊だの、純友といわれても、それは千里も先の別世界なものとしか心に響いて来なかった。