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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

――お館は、ちょっと、ここでお待ちください」

梨丸は、ひとりで、門を叩きに行った。なかなか戻って来なかったが、やがて、何かいそいそして飛んで来た。

「主が出て参りまして、実は、かくかくと、事情を語りましたところ、――なに、豊田の御子が、お寄り下されたとか。それは、まことでおざるか。――と、まるで、賓客に訪われたような歓びかたです」

「おい、おい、梨丸。おまえは、家の主へ、おれだということを、触れたのか」

「いい触らすほどには申しませんでしたが、余り先で訊きます故、豊田の将門様だと、つい申しました。すると、主は、にわかに、仕事着を着更えたり、家の者に、あたりを清めよといったりして、どうぞと、門迎えに出て来て、あそこに、立っておりまする。……ですから、お館にも、知らずにとはいわないで、筑波への通り道に、わざわざ立ち寄ったと仰っしゃって下さい」

「でも、おれは、そこの主など知らないが」

「先では、ようく、存じ上げておりますよ。――ともあれ、駒を、おあずかりいたしましょう」

と、梨丸は、空馬の手綱を曳きながら、主人のあとに従って、そこの土塀門まで尾いて行った。

分野