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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页
常陸源氏
「よくぞよくぞ、これまでに励まれた。亡き良持どのがお在したら、いかばかり歓ばれようぞ。――さすがは、桓武帝の末裔たる御子将門どのよ。わしも、どんなにか、うれしいか知れぬ。よい初春を、昔なつかしいこの館で、祝わせて戴いた」
景行は、口を極めて、ここ数年の、将門の克己を賞めた。
この謹直な君子人のまえでは、将門も、かつての洟垂れ童子の頃そのまま、ただ、畏まって、往年の恩義を謝したり、これからの勤勉と、家運の挽回をちかうくらいが、関のやま、口に出る話題であった。
「たのむぞ。この上ともに」
まるで、真の父が、真の息子を、励ますようにいって帰る景行であった。
その人を、館の中門まで、送り出して、ふと土倉の方を見ると、五、六頭の荷駄が着いている。弟たちと、家人が、馬の背から下ろした武具の菰梱を、武器倉へ、運びこんでいるのだった。
「おう、また、野霜から、誂えてある具足が出来てきたのか」
「はい。なお鉾や弓の類も、近日、出来た分から、次々に届けて参るそうです」
「馬具も、長柄も、弓も、もう相当、量は溜ったろうな」
「だいぶ、揃って参りました。いちど、三つの土倉を、御覧なさいますか」