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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页
「いや、きょうは止そう。……それより将頼と将平は、ちょっと、おれの居間まで、来てくれないか」
将門は、やがて、後から従いてきた二人の弟を、前において、こういった。
「おとといの晩な。初春の夜宴の席で」
「はい」
「おれは、よほど、心が浮いていたものとみえる。われ知らず、桔梗どのの事を、口に出してしまった。あきらめきれぬ女性ではあり、決して、諦めようとも、思ってはいなかったが、さりとて……ああいうつもりもなかったのだ」
「よいではございませぬか。想いを、想いのまま、いつまで、おつつみ遊ばしているよりは」
「そういって貰うて、おれは、涙がこぼれたよ。――将頼、将平。……打ち明けるが、実は、桔梗どのには、おれのほかにも、いのちを賭けて、恋している男がある。おれにとっては、何しろ、手強い恋がたきだ」
「どうしたことです。兄者人、恋に負けてなるものですか。相手があると聞けば、私たちも、兄者人を、失恋の人にはさせられません。なア将平」
「そうですとも。たれです、相手は」
「それがよ。源護の息子たちだ」
「息子たちとは、おかしいではありませんか。護の嫡男、扶ですか。次男の隆か。