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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

――ですから、不愍には、思いますが、もし官がこれを放置しておくなら、乱は、坂東に止まらず、四隣に及び、ひいては、南海海上の剽賊にも響き合って、国家の禍いとならぬ限りもありません」

と、弁じた。

将門は、貞盛の弁論に聞きほれて、敵ながら感心した。時々、なるほどとうなずき顔にさえなった。大判事は、憐れむように、彼を見て、

「将門。おまえの申しぶんを、存分、申したててみい」

と、いった。

だが、到底、彼の呶々などは、聞きづらくて、貞盛のまえには、刃が立たなかった。しかし、貞盛の冷然たる横顔の微笑を見ると、さすがに、憤然と、曠野に燃えた怒気がそのまま口を迸って、貞盛のウソと、こしらえ事を駁し立てた。

しかし、かれの言は、激すほど、彼の粗暴を証拠だてた。情に激して来なければ、ことばも烈々と吐けない性分なのである。だからそれは吼えたり、喰って懸かるだけのものとしてしか聞えなかった。理論は支離滅裂になり、果ては、涙をにじませ、いたずらに、拳をにぎってしまうのである。

「きょうは、退がれ」

靫負庁を出ると、彼はいつも、馬上で戦ったときのように疲れていた。

よび出しは七回、うち二度は、貞盛と、対決された。