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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

「桔梗さまも、御一しょに」

と、いや応なく、疲れていない馬を選んで、馬の背へ、押しあげた。

それと、経明のさしずで、ここまで、火中から運び出した財宝の品々も、十数頭の馬に積んで、

「一刻も早く」

と、大結ノ牧の丘から、南の曠野へ、急がせた。経明はその後で心静かに自刃した。

将門には屈強な郎党が四、五十騎ほど従いて行った。彼と桔梗を乗せた二頭の馬をまん中にして、行くあてもなく、その夜の危地を脱したのであった。

その、わずかな郎党と、妻子をつれて将門は数日のあいだ、彼方此方、逃げまわった。

初めの四、五日は、芦ヶ谷(安静村)の漁夫の家に、妻子を隠して、近くを警戒しながら潜伏していたが、偵察に出した梨丸や、走り下部の子春丸などが、立ち帰って来て、

「ここも、物騒です。良兼の兵が、あちこち、農家の一軒一軒まで、豊田の残党はいないか、将門を匿ってはいないかと、吠え脅しながら、調べ歩いているようです」

と、報告した。

翌日。また六郎将武も、十騎ばかりつれて、ここへ加わり、

「三郎兄や四郎兄は、他日を期して、遠くへ落ちて行きました。兄者人も、こんな近くにいては、物騒です。