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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

そして、

「立ち帰って、よろしい」と、いい渡した。

所持品の中には、大叔父、常陸の大掾国香から、藤原忠平にあてた大事な書類がつつんである。彼は、解いて、たしかに、あるのをよろこび、今度は、懐中にそれを持って、白洲を辞した。

すると、獄司は、門まで送って来て、しきりと、小次郎の物腰を見ていたが、

「おいおい、東国の小冠者。おぬしは、ほんとに、忠平公のお館へ行くのか」

と、訊ねた。

「ええ、参るんです。どっちへ行ったらいいでしょう」

「じゃあ、その書状に見ゆる、大掾国香どのの、由縁なのか。ほんとに、そうなのか」

「はい。国香は、私の大叔父です。私は、東国の豪族、平良持の子、相馬の小次郎と申すんです」

こういえば、獄司にも、帝系の御子だということくらいは、いわなくても分るだろうと、小次郎は、ひそかに、晴がましい血を頬にのぼせた。

案のじょう、獄司は、態度をあらためた。そして、初めて都の地をふむのでは、大臣のお館たりとも、方角に迷おう。放免(下級の偵吏、後世の目明し)を一人、道案内につけてやろう――と、親切を示した上で、

「これよ、小次郎冠者。もしな、そのおてがみを、直々に、忠平公へ出す折、何ぞ、途中の事どもを、公のお口からたずねられたら、云々の理由で、刑部省の獄司、犬養の善嗣に、一夜、たいそう心あたたかな親切によく世話し