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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页
自分の馬鹿
右大臣家でも、雑色の中へ入れて、小舎人ぐらいにしかお用いになっていないじゃないか。それを見ても、わかることだ。あんな者に、親類顔されたり、妙に、親しくなって来られたら、われらまで、同じように、周囲から見られてしまう。それは、出世の障りにこそなれ、なんの益にも足らないということは、おまえにだって、分るだろ」
繁盛は、兄のうしろ姿を、夜霧のなかに見送って――なにか、兄弟ながら、冷たい人だなあと思った。
しかし、彼には、兄の意にそむいてまで、小次郎のために、単独でうごく勇気もない。
ただ、それからは、努めて、小次郎に会わないことのみ、心がけていた。
自分の馬鹿
小次郎の「都への恋」は、ようやく懐疑にかわってきた。
都を知らないがための都への恋は、おなじ夢の子が、みな、いちどはひとしく味わう滅失の苦杯ではあった。小次郎とても、おおむね、多くの世の夢の子たちと、おなじ轍をふんでいたわけである。だが彼自身にとれば、独り自分だけに限っている薄命みたいにうけとれた。
「右大臣家は、おれを、一生涯でも、輦宿の小舎人のまま、飼いごろしにしておくつもりだろうか?」
若い前途を、いたく脅かしたこの不安不平は、以来、小次郎の胸に、癒えがたい深傷となった。