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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页
田山花袋の作品
死ぬ一年か一年半くらい前は、よく私のところに来た。
それで十人ばかりの仲間が私の家に集まった。土曜日に催したから土曜会ということにしたが、毎週ではなく、たしか月二回ぐらいやっていたと思う。国木田がもちろん陰の黒幕で、島崎君もときどきは加わった。皆が集まった動機といえば、田山ばかりがたねをもらいに行って、うまいことをしているからということであった。明治三十七、八年のころだと思う。欧州でも二十世紀の初めで、英国の文学の一つの変り目にあたり、大陸の文学を盛んに英訳をしだした、ちょうどその時期に当っていた。フランスのドーデのものの英訳などが出始めたので、私が田山にすすめたことを憶えている。船に乗る人が盛んに買ったジャックの船上本などという英訳本が、日本にも来たものである。私は丸善に連絡をとっておいて、手元に届くたびに土曜会の連中に紹介した。その土曜会が後に快楽亭の会になり、三転して前にのべた龍土会となったのである。
田山花袋の作品
田山の若い頃は、母親も兄も苦労している中で、花袋は英語だけを勉強した。いい男ではあったし、殊に私は歌の方で早くから松浦先生の所で相知り、一緒に紅葉会を作っていた昔馴染だから、終始後押しをしていた。