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こきょうしちじゅうねん

故郷七十年

柳田 国男

「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页

青空文庫

イタリア・子安貝

連盟で私は日本の不平等な実例をみせつけられたが、この言葉さえ、心を打ちあけて話すことができるようになっていれば、かなりの難問題が解決せられるのにと痛感させられたことであった。

イタリア・子安貝

ローマではいろいろ珍しい経験をした。木下杢太郎君からゆずりうけた『即興詩人』を片手に見物したが、あれを持って歩くと、そのために書いたかと思うようであった。サンタ・マリア教会では、九州の五島から修業に来ているという若い学生に会った。東京さえ知らずに来たといっていたが、懐しがっていろいろと話しかけて来た。私が今も五島に対して非常に興味を持っているのも、そのことと関係がないとはいえないようである。

ローマの北門を出た所に小さな博物館があって、館長さんが大変志のある人で、陳列の仕方に苦心していた。広間の壁に沿って、キリストを抱いたマリアの像がずっと年代順に並べてあった。その中にはもちろんローマ以前のころのものまで並べてあった。つまり母と子の像の陳列である。私はこれをみた時、何の説明はなくとも、聖母マリアの信仰は、遠くキリスト教以前から受けつがれてきたものである、ということがはじめてわかった。