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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

吉川英治『三国志(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 页

青空文庫

「……久しく美酒も飲まん」

典韋は、心のなかで呟いた。翌日は、昼のうちだけ非番だし、行こうと決めて、

「よろしくお伝えしてくれ」と、約束して使いの兵を帰した。

次の日、まだ日の暮れないうちから出向いて、二更の頃まで、典韋は城中で飲みつづけた。そしてほとんど、歩くのもおぼつかない程、泥酔して城外へもどって来た。

「主人のいいつけですから、私が中軍までお送りします。わたくしの肩におつかまり下さい」

一人の兵が、介抱しながら、親切に体を扶けてくれる。見るときのう手紙を持って使いに来た兵である。

「おや、おまえか」

「ずいぶんご機嫌ですな」

「何しろ一斗は飲んだからな。どうだ、この腹は。あははは、腹中みな酒だよ」

「もっと飲めますか」

「もう飲めん。……おや、おれは随分、大漢のほうだが、貴様も大きいな。背がほとんど同じぐらいだ」

「あぶのうございます。そんなに私の首に捲きつくと、私も歩けません」

「貴様の顔は、すごいな。髯も髪の毛も、赤いじゃないか」

「そう顔を撫でてはいけません」

「なんだ、鬼みたいな面をしながら」

「もうそこが閣ですよ」

「何、もう中軍か」

さすがに、曹操の室の近くまで来ると、典韋は、ぴたとしてしまったが、まだ交代の時刻まで間があったので、自分の部屋へはいり込むなり前後不覚に眠ってしまった。