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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

吉川英治『三国志(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 页

青空文庫

呂布が、自身の剣へ手をかけると、陳大夫は、天を仰ぐように、

「ああ、ご運の末か。一代の名将も、こう眼が曇っては救われぬ。みすみすご自身の剣で、ご自身の首を刎ねようとなさるわ」

「何を、ばかな!」と、いったが、呂布も多少気味が悪くなった。

その顔いろの隙へ、陳大夫の舌鋒はするどく切りこむように云った。

「確か、先日も申しあげてあるはずです。いかなる良策も、お用いなければ、空想を語るに等しいと。――この老ぼれの首を落したら、誰かその良策を施して、徐州の危急を救いましょうか。――ですからその剣をお抜きになれば、ご自身の命を自ら断つも同じではございませんか」

「汝の詭弁は聞き飽いた。一時のがれの上手をいって、邸に帰れば、暢気に寝ておるというではないか。――策を用いぬのは、われではなく汝という古狸だ」

「ゆえに、ご短気じゃというのでござる。陳大夫は早ひそかに、策に着手しています。即ち近日のうちに、敵の第六軍の将韓暹と、某所で密会する手筈にまでなっておるので」

「えっ。ほんとか」

「何で虚言を吐きましょう」

「しからば何で、私邸の門を閉じて、この戦乱のなかを、安閑と過しているのか」