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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

吉川英治『三国志(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 页

青空文庫

兵も、暑いので眠られないとみえる。

短い夏の夜は明ける。

いつのまに帰ったか、陳大夫のすがたは朝になるともう見えなかった。陽が高くなると、きょうも酷熱である。その中を、袁術の本営から伝騎の令は八方へ飛んだ。

七路の七軍は一斉にうごきだした。雲は低く、おどろおどろ遠雷が鳴りはためいている。

徐州城は近づいた。

一天晦瞑、墨をながしたような空に、青白い電光がひらめく度に、城壁の一角がぱっと明滅して見える。

ぽつ! ぽつ! と大つぶの雨と共に、雷鳴もいよいよ烈しい。戦は開始された。

七路に迫る寄手は喊声をあげてきた。呂布ももちろん、防ぎに出ていた。――驟雨は沛然として天地を洗った。

夜になったが、戦況はわからない。そのうちにどうしたのか、寄手の陣形は乱脈に陥り、流言、同士討ち、退却、督戦、また混乱、まったく収まりがつかなくなってしまった。

「裏切りが起った」

夜が明けて、初めて知れた。第一軍張勲のうしろから、第七軍の楊奉、第六軍の韓暹が、火の手をあげて、味方へ討ってかかってきたのである。

――と知った呂布は、

「今だっ」と、勢いを得て、敵の中央に備え立てている紀霊、雷薄、陳紀などの諸陣を突破して、またたくまに本営に迫った。