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さんごくし
三国志(三)
吉川 英治
吉川英治『三国志(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 页
「如かず、この際は――あなたから曹操へ急書を発し、こちらは江を渡って袁術の側面を衝くゆえ、許都から大軍を下し、彼の正面に当り給え――と、もっぱら曹操の軍に主戦をやらせるのです。そしてご当家はあくまでも、援兵というお立場をおとりなさい」
「なるほど」
「一にも二にも、曹操を助けると唱えておけばです、後日ご当家に危急のあった折に、曹操へ援兵を要求することだってできましょう」
「や、ありがとう。長史のことばは、近頃の名言だ。その通りに計らおう」
彼の発した書簡は、日ならずして、許都の相府に着いた。
この秋、相府の人々は、
「丞相は近ごろ、愚に返ったんじゃないか」
と、憂いあうほど、曹操はすこしぼんやりしていた。
この春、張繍を討つべく遠征して、かえって惨敗を負って帰ったので、彼の絶大な自信にゆるぎがきたのか、また多情多恨な彼のこととて、今なお、芙蓉帳裡の明眸や、晩春の夜の胡弓の奏でが忘れ得ないのか――とにかく、この秋の彼の姿は、いつになく淋しい。
「否、否。――丞相はそれほど甘い煩悩児でもないよ」
と、相府のある者は、彼のすがたをよく新しい祠堂の道に見るといって、人々の愚かな臆測をうち消した。