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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

吉川英治『三国志(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 页

青空文庫

三名の侍女が夕べの燭を点じて去る。

なお、御眉の陰のみは暗い。

伏皇后は、そっと問われた。

「陛下。何をそのようにご宸念を傷めておいで遊ばしますか」

「朕の行く末は案じぬが、世の末を思うと、夜も安からず思う。……哀しい哉、朕はそも、いかなれば、不徳に生れついたのであろう」

はらはらと、落涙されて、

「――朕が位に即いてから一日の平和もなく、逆臣のあとに逆臣が出て、董卓の大乱、李、郭の変と打ちつづき、ようやく都をさだめたと思えば、またも曹操が専横に遭い、事ごとに、廟威の失墜を見ようとは……」

共にすすり哭く伏皇后の白い御頸に、燭は暗くまたたいた。

「政治は朝廟で議するも、令は相府に左右される。公卿百官はおるも、心は曹操の一顰一笑のみ怖れて、また、宮門の直臣たる襟度を持しておる者もない。――朕においてすら、身は殿上にあるも、針の氈に坐しているここちがする。――ああ、いつの日、この虐げと辱とからのがれることができるであろう。漢室四百余年の末、今ははや一人の忠臣もないものか。――朕が身を歎くのではないぞ。朕は、末世をかなしむのである」

すると。

御簾の彼方に誰やら沓の音がした。