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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

吉川英治『三国志(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 页

青空文庫

関羽は、青龍刀を左の手に持ち変えた。王忠は、あわてて馬の首をうしろへ向けた。が、早くも関羽の臂は彼の鎧の上小帯をつかみ、

「じたばたするな」

と、ばかり軽々小脇に引っ抱えて馳けだした。

潰乱する王忠軍を蹴ちらして、馬百匹、武器二十駄を分捕って、関羽の手勢はあざやかに引揚げた。

帰城すると、早速、関羽は王忠をしばりあげて、玄徳の前に献じた。

玄徳は王忠に向って、

「汝、何者なれば、詐って、曹丞相の名を偽称したか」と、詰問した。

王忠は答えて、

「詐りは、われらの私心ではない。丞相がわれらに命じて、御旗をさずけ、擬兵の計事をさせられたのである」と、ありのままに云った。

そして、なお、

「不日、袁紹を破って、丞相がこれに来給えば、徐州ごときは、一日に踏みつぶしてしまわれるであろう」と豪語を放った。

玄徳はどう考えたか、王忠の縄を解いて、

「君の言は、まことに、神妙である。事の成行きから、丞相のお怒りをうけ、征を受けて、やむなくこの徐州を守るものの、玄徳には曹操に敵対する意志はない。君もしばらく、当城にあって、四囲の変化を待ち給え」と、彼を美室に入れて、衣服や酒を与えた。