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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

吉川英治『三国志(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 页

青空文庫

その時を待って一挙に決するが利じゃ――と申すのだが」

「なるほど、安全な考えです。けれど田豊は学者ですから、どうしても机上の論になるのでしょう。私ならそうしません」

「其許ならどうするか」

「時は今なりと信じます。なぜならば、なるほど曹操の兵馬は強堅ですし、彼の用兵奇策は侮りがたいものですが、ここようやく、彼も慢心をきざし、朝野の人々にうとまれ、わけて先頃、国舅の董承以下、数百人を白日の都下に斬ったことなど、民心も離反しているにちがいありません。儒者の論に耳をとられて、今を晏如として過ごしていたら、悔いを百年にのこすでしょう」

「……むむ、そうか。そういわれてみると、田豊はつねに学識ぶって、そのくせ自家の庫富を汲々と守っている性だ。彼はもう今の位置に事足りて、ただ余生の無事安穏を祈っておるため、そんな保守的な論を儂にもすすめるのかもしれん」

ほかにも何か気に入らないことがあったのであろう。袁紹はその後、田豊を呼びつけて、彼の消極的な意見を痛罵した。

「これは誰か、主君をそそのかした蔭の者があるにちがいない」

田豊は直感したので、日頃の奉公はこことばかり、なお面を冒して反論を吐いた。