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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

吉川英治『三国志(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 页

青空文庫

その中を。

例の長髯を春風になびかせて、のそのそと、相府の門へいま入ってゆくのは関羽の長躯であった。

曹操に会って、関羽は、

「日頃のご恩報じ、こんどの大会戦には、ぜひ此方を、先手に加えてもらいたい」と、志願して出た。

曹操は、うれしそうな顔したが、すぐ何か、はっと思い当ったように、

「いやいや何のこの度ぐらいな戦には、君の出馬をわずらわすにはあたらん。またの折に働いてもらおう。もっと重大な時でもきたら」と、あわてて断った。

余りにもはっきりした断り方なので、関羽は返すことばもなく、すごすごと帰って行った。

日ならずして、曹軍十五万は、白馬の野をひかえた西方の山に沿うて布陣し、曹操自身、指揮にあたっていた。

見わたすと、渺々の野に、顔良の精兵十万余騎が凸形にかたまって、味方の右翼を突きくずし、野火が草を焼くように押しつめてくる。

「宋憲宋憲。宋憲はいるか」

曹操の呼ぶ声に、

「はっ、宋憲はこれに」とかけ寄ると、曹操は何を見たか、いとも由々しく命じた。

「そちは以前、呂布の下にいた猛将。いま敵の先鋒を見るに、冀州第一の名ある顔良がわが物顔に、ひとり戦場を暴れまわっておる。