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あかくら

中谷宇吉郎集 第一巻

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:赤倉、英国日食班の印象、寒月の「首縊りの力学」その他、球皮事件、「光線の圧力」の話、御殿の生活、雑魚図譜、雑記、霜柱と白粉の話、十二花の雪、スポーツの科学、先生を囲る話、「先生を囲る話」について、続先生を囲る話、寅彦夏話、冬彦夜話、文化史上の寺田寅彦先生、雪の化石1、雪の話、リチャードソン。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,056 字 · 223 页

青空文庫

私はそれには随分不服だったが、御殿では畏れ多いから俯向いて御飯を戴くのだと、Mの祖母に固くいいつけられていたので、我慢していた。勿論殿様と御前様だけは、普通に坐ったままで済まされた。

そのような時でも、御馳走は今の東京の普通の生活に較べると、随分質素なものだった。御殿の生活では、生活費は思い切って切り詰めてあったようである。記憶に残っているのは御馳走のことが主であるが、普通に祖母と私だけで御前様と一緒に夕飯を戴く時などは、大抵小さい魚と野菜の煮たものと、いつもきまった豆腐の御汁位の程度であった。それでも御殿には、ちゃんときまった料理人の夫婦がおいてあった。

大殿様が東京から御帰りになった時などは、よく組合せ文房具と洋菓子とを戴いた。円いカステラの上に砂糖で花を描いて、その上に仁丹位の銀の粒が載った今では普通の洋菓子を、二つばかり白紙に包んだものを大切に持って家へ帰ると、Mの祖母は、その中の一つをついでの人に頼んで、私の田舎の家へ送り届けたりしたこともある。父や伯父などは、私が始終御殿へ上っているので恐縮して、何か献上物をしたいといっていつでも頭を悩ましていたそうである。