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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

それとも、三男繁ですか」

「げにも、笑止なことだ。その扶と、次男の隆とが、これまた、ひとりの桔梗を争いあっているわけだ。そのため、彼ら兄弟も、無下には、桔梗どのを手にいれかねているし、桔梗どのの親共も、それを理由に、どっちの求めにも、巧みに、断る口実を持って来られたのだが……もうそうそうは、その口実も、利かない切迫に追いつめられているらしい」

「――と、仰っしゃるのは」

「扶と隆の兄弟が、やはり兄弟だけに、話し合って、この恋、どっちに幸いするか、籤を引いて、桔梗の所有を決めようとなったらしい」

「ば、ばかにしている。恋する女性を、賭け物にするなんて……」と、気の優しい将頼すら、義憤をもらして、「――それで、野霜の伏見掾は、娘を、そのどっちかへ、与えるつもりなのでしょうか」

「いや、あの翁は、職は具足師でも、心は硬骨だ。もちろん、やる気はない。それはおれにも誓っている」

「いつ、お会いでした」

「ここへ来ては、人目にたつ。そこでいつも、御厨の御料園へ、そっと忍んで見える。あの経明の住んでいる池守小舎のうちで、幾たびとなく、会っていた。――愛娘の桔梗どの可愛さに、あわれ、野霜の翁も、子ゆえに迷う夜の鶴という諺どおり、何かにつけて、おれを訪ねて来る」