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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页
「それでは、親御の伏見掾も、兄者人へ、嫁がせたいと希い、桔梗どのも、兄者人を、想うているわけでございましょうに」
「ま。……そうなのだ」
将門は、顔を赤くした。弟たちに、自惚れと笑われもしまいかと、遠慮がちな頷き方をした。
「――ならば、何を、さは、御躊躇なさることがありましょう。扶や隆へ、うまく、いいわけのつくように、翁が、考えた通りの手段を、兄者人が、さっそく、実行しておしまいになれば、それまでの事でしょう」
「いや、おれの惧れるのは、それから先だ。――何といっても、源護一家は、新治、真壁、筑波三郡にわたる常陸源氏の宗族だ。坂東一帯にも、数少ない大族ではあり、嵯峨源氏の与党も各地にもっている」
「だって……兄者人。恋でしょう、問題は。いくら嵯峨源氏の嫡男でも、女ひとりに、そんな表立った権力を振えもしますまい」
「……が、なあ弟。あいにくと、その護の女二人までが、おれたちの叔父共へ、嫁いている。ひとりは良兼どのの室。ひとりは良正どのの内室へ」
「縁は、どうつながっていようともです。――では、兄者人は、桔梗どのを、想い切れるのですか」
「きれない……」
将門は、眼をつむった。