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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

と、二騎三騎と、相次いで、急に維茂に訴えて来た。

――まあ、一献、と旅舎の者に命じて、酒肴の支度をさせ、定遠がしきりに、三名をひき止めていた折であったが、途端に、そんな主客のくつろぎは消し飛ばされてしまった。

「なに、将門の軍勢だと」

と、まず貞盛が蒼白な顔をして、浮き腰を立てたし、為憲は、予期するところもあったので、

「来たな! 機先を制して」

と、眦を上げて、突っ立った。

けれど、誰よりも、責任上、仰天したのは、維茂である。維茂は、息子の為憲と貞盛とが、ここ数ヵ月にわたって、何か、将門を牽制すべく、軍備の充実をはかっているくらいなことは知っていたが、そうまで、将門を刺戟していたものとは思っていない。もとより両国間に戦闘が起ろうなどとは、夢想もしていない人だった。

「ど、どういう事なのだ。これは一体」

貞盛を見、息子の顔を見、彼はその狼狽ぶりを隠すこともなく狼狽して、二人に正した。

「何か、間違いではないのか。……あの一徹者の将門を相手に、事を起したら、必ずやまた、かの国香や水守の良正や羽鳥の良兼と同じ轍を踏むだろう。――構えて相手にするなと、おまえ達にも固くいっておいた」