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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

「……かも、知れんなあ」

「さすれば、押領使たる御職務からも」

「わしが起つのは当然だといわるるのか」

「ま。理屈になっては、失礼に存じますが」

「いや、それは、ほんとじゃよ。……だが、朝廷にせよ、太政大臣家にせよ、こんな騒ぎになると、すぐ忠誠をもち出すが、一体、わしの官位はどうだ。何十年、一介の押領使のままで、捨ておかれて来たことか。年々、貢はさしあげても、絶えて、恩爵の命などうけたこともない」

「いや、ごもっともです。しかし、もし将門平定の後は、必ず、こんどこそは、中央でも、すておかれますまい」

「それがさ……。勲功勲功と、匂わせておきながら、血をながして、さて、乱が鎮まったとなると、けろりと、忘れ去るのが、公卿たちの前例じゃよ。ばかな話さ」

「貞盛が、こう罷り出て、御出馬を仰ぐからには、誓って、左様なことはないように致しまする」

「ふム……。あんたが、誓うというのか」

「誓紙をさしあげても」

「おう、誓紙とあれば、受けようか。――そして、秀郷を総帥に立て、三軍の指揮を委すというなら、出向いてもよいが、さもなくて、ただのお手伝いなら、まあ、ごめん蒙りたいものだ」