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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页
小次郎の父、良持などは、それの主人として、坂東八州のうちでも、尤なる者のひとりだった。
かれの家は、この未開坂東の一端に根を下ろしてから、五代になる。
――桓武天皇――葛原親王――高見王――平高望――平良持――そして今の相馬の小次郎。
系図は、正しく、帝系を汲んでいるが、そのあいだに、蝦夷の女の血も、濃く、交じったであろうことは、いうまでもない。
また、帝系的な都の血液と、アイヌ種族の野生の血液とが、次のものを、生み生みしてゆけば、母系の野生が、著しく、退化種族の長を再現して、一種の中和種族とも呼べるような、性情、骨相をもって生れてくることは、遺伝の自然でもあった。
だから、小次郎の親の良持はすでに、その顴骨や、頤の頑固さ、髯、髪の質までが、都の人種とは異っていた。
性情もちがい、処世の考え方も、良持の代になって、ちがって来た。
良持は、先祖からの、官途の職をすてて、土に仕えた。喰うて、税を納めて、余りあるほどな、前からの荘園もあったが、なお多くの奴婢、奴僕、田丁を使役し、上に、家人等の監督をおいて、限りない未開の原始林を伐り拓き、火田を殖やし、沼を埋め、丘を刈り、たちまちにして、野の王者となった。