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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页
それから中央の方から西にかけては大変に多い。
坊さんに頼んで支那からもって来て貰ったと解釈するのはかわいそうである。のむという習慣も、大昔は知らないが、ずいぶん長い間、ごく単純なのみ方をしていたらしく、今でも農家などはこれをつづけている。
私の播州の家などでも、煎茶というものは客でもないかぎり、常はほとんど買わずにいるくらいであった。山の方の村から「タテ」という、畳一帖より広いものをまるくした大きな袋に入れて担いで来たのを、桝で計って買いこみ、大きな壺に入れておいた。日ごろの使い分は、長火鉢の引出しの一つに、底に紙をしいて、その中にほうじて入れておく。毎日少しずつ引出しをあけて使うわけである。「茶ん袋」というものに入れて、茶壺の耳についた金の輪に紐でしばりつけ、釜の湯がくらくらたぎると、そのしばりつけた茶袋を、そのまま放り込む。そして色の出た茶を茶杓で酌み出してのむようになっていた。湯がなくなれば、茶ん袋はそのままに、いくらでもあとから足してわかしていた。そのため茶ん袋というものは汚い茶色になっていた。
田舎ではたいていの家でお茶を汲むというが、それはこの茶杓を考えての表現の仕方に外ならない。