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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页
煎茶は今日でこそ何処へ行っても出されるが、第一あの煎茶茶碗の出来た時代は新しいのである。急須という言葉も、何がもとか知らないが“急”か“求”に“須”を書く。だから「きゅうす」というが、これも支那語の輸入で、そう古くはない。
お茶所というものは、東京近くの狭山でも、駿河の奥山でも、やはり非常によく出来る所はみな同じ地形である。それが自然生の基礎で、とくに優秀なものは、宇治とか、どこそことかにあるというものの、普通のものなら、この成城のあたりにも、散歩のたびに見かけるのである。狭山には宮中御用の茶園があったり、宇治などは京都に近いし、とくに黄檗の寺もあったので、良い茶を製ることを心がけたわけであろう。
通例茶の歴史は、支那から持って来たというので、全部持って来たというふうに考えられがちだが、そんなに全部を簡単に輸入できたとは思えない。日向の椎葉などでも、私が見たのは、山の全面に山茶が生え、それで土砂崩れを止めているところへ、翌年櫟などが少しずつ生えて来るらしい。
どこの山地にでも茶が育っているのだから、別に茶園を作る必要もなさそうだが、宇治をはじめ方々にあるのは、いっしょに規則正しく栽培すると、特別に濃い、良い茶が出来るからである。