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こきょうしちじゅうねん

故郷七十年

柳田 国男

「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页

青空文庫

秋田県あたりの若い研究家が、木地屋の研究とともにコケシのことを調べて、さまざまの解釈を下しているが、どれも、どうも納得できかねる。福岡県にも一人、民俗学をやっている曾田君というお医者さんが、やはりコケシを収集しているとかきいている。

東京で子供の髪形でオカッパというのを、郷里の播州ではオケシというが、そのことを考えれば、コケシという言葉は、容易にわかると思う。われわれの子供の時分にいちばん安い小さな人形を「ケシ坊主」といったが、つまりこれである。オケシ人形とか、ケシ人形とか呼んでいたのが転じてコケシとなったわけで、別に荘重な起源があるわけではない。小さなケシ人形という意味なのを、ケシという言葉を知らないで、コケシという一つの言葉と思ってしまったのだ。

オシャブリと東京でいう人形を、上方では舐り人形とか、ネブリッ児とかいっている。私らの子供のころは、一個一厘で一文菓子屋で売っていた。円い木片の一方に顔が描いてあった。中には両方の端に顔のついているのもあって、白木をまるく削って滑らかにし、子供がしゃぶれるようになっていた。つまりこれはゴムのおしゃぶりが出て来る前には、どこにでも見られた品である。