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こきょうしちじゅうねん

故郷七十年

柳田 国男

「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页

青空文庫

ではなく、一つの集団、例えば職人らのいうオヤ方とか、博徒らの使うオヤ分のように、古くからあった親族・一門のカシラという広義のものではなかったかと思うのである。生みの親などという肉親の関係は、それより後になって使用されはじめたのではあるまいか。

思えば故郷を離れて七十一年の間、私はこうしたことに心を寄せて来たのであった。いま機会あって故郷の人々に、私の歩いて来た足跡をここに少しずつ報告しているわけである。

さて、各地の方言を調べているうち、紀州の一部では、このオヤが山林の管理人や巡査、つまり一種の権力をもつ人々のことを意味し、九州豊後では、尊敬すべき年長者のことをイヤさんと呼ぶことなども判って来た。古語で礼をイヤと訓むのであるが、ヤアといえば今日でこそ軽々しい応答語になっているが、じつは礼を尽すべき長上に対する返答の言葉で、恭々しいのウヤなどと同じくこうしたところに源を発しているように思われる。イヤも、オヤクのオヤと同じ系列のものではあるまいか。ちなみにオヤクとは、後世のオヤコ(親子)と意識して区別するための、この地方での発音であろうと思われる。

現に東北地方では、はっきりオヤコと発音している。