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しのげんり
詩の原理
萩原 朔太郎
「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页
この感情の本質は涙ぐましく、甘くスイートな気分に充ちてヴァイオリンのようにメロディアスのものである。故にその発想の形式は、必然に柔軟可動体なる、メロディアスの自由主義を欲求する。これに反して一方のもの、即ち意志的なる「権力感情」は、すべてに於て力のある、骨組みのがっしりとした、拍節の正しいリズミカルの美を求める。そしてこの精神から、古代の芸術に見るクラシズムが発生したのである。此処でクラシズムについて一言しよう。
クラシズムとロマンチシズムとは、実に芸術における北極と南極で、世界の終る両端である。浪漫主義の本有感は、愛のメロディアスな情緒感で、柔軟可動の自由を愛し、内容を本位とするものであるのに、クラシズムは情緒を排し、感傷的気分を嫌い、そして均斉、対比、平衡、調和等の、数学的法則による形式を重要視する。クラシズムの表現が欲するものは、何よりも骨骼のがっしりした、重量と安定のある、数学的頑固を持った、言わば「物に動ぜぬ直立不動の精神」である。それは一切の弱々しいもの、柔軟のもの、骨組みのぐにゃぐにゃしたもの、女らしく繊弱なものを跳ね飛ばすところの、男性的ストアの美を要求する。