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しのげんり
詩の原理
萩原 朔太郎
「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页
故にクラシズムの精神は、正に「独逸軍隊の行進」である。どっしりとして大地を蹈みつけ、歩調に力があり、数学的正確の規律を以て、真にリズミカルに堂々と行軍する。(近代の諸国に於ける所謂「軍隊精神」なるものはすべて独逸国の創造になる。それはクラシズムと、科学的精神とを、帝国主義に於てビスマルクが芸術化した。)
こうしたクラシズムの精神は、正に権力感情の表象であり、すべてに於て貴族的な尊大感を誇示している。即ち本質的に形式主義で、勿体ぶった威権を重んじ、そして何よりも「荘重典雅」の美を重視する。故にクラシズムの芸術は、すべて歴史の上古から中世にかけて栄えた。その歴史の時代に於ては、君主が専制的に国家を支配し、或は貴族が政権を独占し、武士が封建の社会を形成していた。そして多くの芸術品は、君主や貴族の栄誉のために、その権力感の悦びを充たすべく製作された。然るに近代の平民的な社会に至って、この種の芸術は根本的に廃ってしまった。近代の新しき趣味性は、かかるクラシズムの美を悦ぶべく、あまりにデモクラチックな自由主義に傾向している。
此処に於て吾人は、先に前の章で暗示しておいた一つの宿題、即ち近代に於ける古典韻文の凋落を、真の原因について知ることができるのである。