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しのげんり
詩の原理
萩原 朔太郎
「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页
思うにこうしたイデヤは、多くの詩人に共通する本質のもの、詩的霊魂の本源のものであるか知れない。なぜなら古来多くの詩人が歌ったところは、究極に於ては或る一つの、いかにしても欲情の充たされない、生の胸底に響く孤独感を訴えるから。実に啄木は歌って言う。「生命なき砂の悲しさよさらさらと握れば指の間より落つ」「高きより飛び下りる如き心もてこの一生を終るすべなきか」と。彼の求めたものは何だろうか――おそらくそれは啄木自身も知らなかった。ただどこかに、或る時、何等か、燃えあがるような生活の意義をたずね、蛾群の燈火に飛び込むように、全主観の一切を投げ出そうとする、不断の苛たしき心のあこがれ、実在のイデヤを追う熱情だった。されば彼の生涯は、芸術によっても満足されず、社会運動によっても満足されず、絶えず人生の旅情を追った思慕の生活、「何処にかある如し」「遂に何処にか我が仕事ある如し」の傷心深き生活だった。
だが詩人にして、いずこか傷心深くないものがあるだろうか。支那の詩人は悩ましげにも、「春宵一刻価千金」と歎息している。そは快楽への非力な冒険、追えども追えども捉えがたい生の意義への、あらゆる人間の心に通ずる歎息である。