Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
もし、ご隠居のほうが負けたら、おれたち総がかりであの牢人へ向うよ、なあみんな」
「そうだとも」
「老婆を討たせて堪るものか」
駕かき達の説明を聞くと、群衆も、熱をおびて、騒めきだした。
「やれ、やれ」
と、けしかける者もあるし、
「――だが、婆さんの息子はどうしたんだ」
と、訊ねる者もある。
「息子か」
それは駕かきの仲間は誰も知らないらしく、多分死んでしまったのだろうという者もいるし、いやその息子の生死も旁さがしているのだと識ったふうに説いている者もある。
――その時、お杉ばばは、数珠をふところへしまっていた。駕かきも群衆も、同時に、ひっそりした。
「――武蔵!」
ばばは、腰の小脇差へ左の手を当てて、こう呼びかけた。
先刻から武蔵はそこに黙然と立っていた。――およそ三間ほどの距離をおいて――棒のように立っていた。
権叔父も、隠居のわきから、足構えして、首を前へ伸ばし、
「やいっ」
と、呼ぶ。
「…………」
武蔵は、答える言葉も知らないもののようだった。
姫路の城下で、袂をわかつ時に沢庵から注意された記憶は今思い出されたが、駕かき達が、群衆へ向っていいふらしていた言葉は、心外にたえない。