Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
茨
一
「お。お通さんではないか」
樹蔭の石に腰をおろしていた人影が起って来ていった。宗彭沢庵なのである。
「こんな遅くまで帰らないことはないのに、どうしたかと思って、捜していた所だった。おや、跣で? ……」
彼女の白い足へ眼を落すと、お通は、泣きながらその胸へとびついて訴えた。
「沢庵さん、大変です、アア、どうしよう」
沢庵は、相変らず、
「大変? ……世の中に大変なんていうことがそうあるだろうか。まあ、落着いて、理を聞かせなさい」
「新免家のお吟さんが捕まって行きました。……又八さんは帰って来ないし、あの親切なお吟様は捕まってゆくし。……わ、わたし、これから先……ど、どうしたらいいんでしょう」
泣きじゃくって、いつまでも沢庵の胸に身をふるわせていた。
茨
一
土も草も大地は若い女のような熱い息をしている、むしむしと顔の汗からも陽炎が立ちそうである。そして、ひそりとした春の昼中。
武蔵はひとり歩いていた。自己の対象となる何物もない山の中を、いらいらした眼つきを持ち、例の黒樫の木剣を杖に持ってである。彼はひどく疲れているらしかった。禽が飛んでも、すぐ鋭い眸がそれに動く。