Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme

Aozora Bunko

九

どうじゃ、おぬしも食べるか」

「…………」

武蔵はうなずいて、初めて、ニッと白い歯を見せた。

九

お通が茶碗へ盛って渡すと、武蔵は、ふうふうと、熱い雑炊をふいて喰べる。

箸を持っている手がふるえている、茶碗のふちへ歯がガツガツと鳴る。いかに、飢えていたことか、浅ましいなどは常日頃のことばである。怖ろしいほど真剣な本能の戦慄であった。

「美味いのう」

沢庵は、先へ箸を措いて、

「酒はどうじゃ」

と、すすめる。

「酒は飲みません」

武蔵は答えた。

「きらいか」

というと、武蔵は首を振った。幾十日の山ごもりに、彼の胃は強い刺戟に耐えないらしかった。

「お蔭様で、暖かになりました」

「もうよいのか」

「十分に――」

武蔵は、お通の手へ茶碗を返して――

「お通さん……」

と、改めて呼んだ。

お通は、うつ向いたまま、

「はい」

聞きとれないような声でいう。

「ここへ、何しに来たのか。ゆうべも、この辺に、火が見えたが」

武蔵の質問に、お通はどきっとした。どう答えようかと顫いていると沢庵が傍らから無造作に、

「実はの、おぬしを召捕りに登って来たのじゃ」

と、いって退けた。

武蔵は、かくべつ驚きもしなかった。