Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
二
城太郎は、ぷっと膨れて、
「何がおかしいのさ。おたんこ茄子め」
と、肩をいからせた。
びっくりした途端に、朱実は、笑いが止まってしまった。
「――あら、怒ったの」
「当り前だい、人が、叮嚀にものを頼んでいるのに」
「ごめん、ごめん。もう笑わないから――そして今の言伝ては、又八さんが、もし帰って来たら、屹度しておくからね」
「ほんとか」
「え」
また、こみあげる微笑を噛みころすように頷いて――
「だけど……何といったっけ……その言伝てを頼んだ人」
「忘れっぽいな。宮本武蔵というんだよ」
「どう書くの、武蔵って」
「武は――武士の武……」
といいかけて、城太郎は足もとの竹の小枝をひろい、河原の川砂へ、
「こうさ」
と書いて見せた。
朱実は、砂に書かれた字を、じっと眺めて、
「あ……それじゃあ、武蔵というんじゃないの」
「武蔵だよ」
「だって武蔵とも訓める」
「強情だな!」
彼の抛った竹の小枝が、川の面をゆるく流れて行く。
朱実は、いつまでも、川砂の文字へ眼を吸いよせられたまま、そして眼じろぎもせずに、何か想い耽っていた。
やがて、その眸を、足もとから城太郎の顔へ上げ、もいちど、改めて彼の姿をつぶさに見直しながら嘆息のように訊ねた。