Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
一
本位田家の隠居は、きかない気性の老母だった、又八のおふくろに当る人だ、もう六十ぢかいが、若い者や小作の先に立って野良仕事に出かけ、畑も打てば、麦も踏む、暗くなるまでの一日仕事をおえて帰るにも、手ぶらでは帰らない、腰の曲った体のかくれるほど、春蚕の桑の葉を背負いこんで、なお、夜業に飼蚕でもやろうというくらいなお杉婆あさんであった。
「おばばアー」
孫の鼻たらしが、畑のむこうから、素はだしで来るのを見かけて、
「おう、丙太よっ、汝れ、お寺へ行ったのけ?」
桑畑から腰をのばした。
丙太は、躍って来て、
「行ったよっ」
「お通さん、いたか」
「いた、きょうはな、おばば、お通姉さんは美麗な帯をして、花祭りしていた」
「甘茶と、虫除けの歌を、もろうて来たか」
「ううん」
「なぜもろうて来ぬのだ」
「お通姉さんが、そんな物はいいから、はやくおばばに知らせに、家へ帰れというたんや」
「何を知らせに?」
「河向いの武蔵がなよ、今日の花祭りに歩いていたのを、お通姉さんが見たのだとよ」
「ほんとけ?」
「ほんとだ」
「…………」
お杉は眼をうるませて、息子の又八のすがたが、もうそこらに見えてでもいるように見まわした。