Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme

Aozora Bunko

野の人たち

「……そらそら、すこしすいたと思ったらまた参詣人が混んで来たよ。押さないで、押さないで――おい若いの――順番におしよ」

「もし、坊さん」

「わしかい?」

「順番といいながら、おめえは、女にばかり先へ汲んでやるじゃないか」

「わしも女子は好きだから」

「この坊主、極道者だ」

「えらそうにいうな、お前たちだって、甘茶や虫除けが貰いたくて来るんじゃあるまい、わしには、分っている、お釈迦さまへ掌をあわせに来るのが半分で、お通さんの顔を拝みにくる奴が半分。お前らも、その組だろう。――こらこらおさい銭をなぜおいてゆかん、そんな量見では、女にもてないぞ」

お通は、真っ紅になって、

「沢庵さん、もういいかげんにしないと、ほんとに私、怒りますよ」

と、いった。

そして、疲れた眼でも休めるように、ぼんやりしていたが、ふと、参詣人の中に見えた一人の若者の顔へ、

「あっ……」

と口走ると、指の間から筆を落した。

彼女が、起つと共に、彼女の見た顔は、魚のようにすばやく潜んでしまった。お通は、われを忘れて、

「武蔵さんっ、武蔵さんっ……」

廻廊のほうへ駈けて行った。

野の人たち

一

ただの百姓ではない、半農半武士だ、いわゆる郷士なのである。