Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
と、顔をさしていう。
「いや……いずれまた」
「そちらの人は」
「ちと、きょうは気が冴えんので――」
なんとなく皆、怯み渡ってしまった気ぶりである。幾番目かに武蔵が顎を向けられて、
「おてまえはどうする?」
武蔵は、頭を下げ、
「どうぞ」
といった。
「どうぞとは?」
「お願い申す」
起つと、一同の眼が武蔵を見た。不遜な阿巌という当の法師はもう引っ込んで、他の法師たちの中でげらげら何か笑っているのであったが、道場へ次の相手が出たので振向いた。しかしもう厭気がさしてしまったらしく、
「誰か、代れ」
と不性を極め込んでいる。
「まあ、もう一人じゃないか」
そういわれて、彼は、渋々また出て来た。つかい馴れているらしい真っ黒に艶の出ている前の槍を持ち直すとその槍を構え、武蔵へは尻を向けて、人もいない方へ、
ヤ、ヤ、ヤ、ヤッ!
と怪鳥の叫ぶような気合いを発したかと思うと、いきなり槍もろとも駈けだして行って、道場の突当りの板へどかんとぶつけた。
そこは日ごろ彼らの槍を鍛える稽古台にされているとみえ、一間四方ほど新しい板に張り代えてあるのに、彼の真槍でもないただの棒は、鋭い穂で貫いたようにぶすッとそこを突き抜いていた。