Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme

Aozora Bunko

年のわりに派手な寝衣裳も、その白い顔も、ひとつ闇になって、窓びさしに、夜露の音だけが静かである。

「まだ、知らないのかしら」

寝ている者の抱いている木剣を、彼女が取りのけようとするのと、がばっと、武蔵が刎ね起きたのと、一緒だった。

「盗ッ人!」

短檠の倒れた上へ、彼女は、肩と胸をついた、手をねじ上げられた苦しさに、思わず、

「痛いっ」

と、さけぶと、

「あっ、おばさんか」

武蔵は、手を離して、

「なんだ、盗人かと思ったら――」

「ひどい人だよ、おお痛い」

「知らなかった、ご免なさい」

「謝らなくともいい。……武蔵さん」

「あっ、な、なにをするんだ」

「叱っ……。野暮、そんな大きい声をするもんじゃありません。私が、おまえをどんな気持で眼にかけているか、よくご存じだろう」

「知っています、世話になったことは、忘れないつもりです」

「恩の義理のと、堅くるしいことでなくさ。人間の情というものは、もっと、濃くて、深くて、やる瀬ないものじゃないか」

「待ってくれ、おばさん、いま灯りをつけるから」

「意地悪」

「あっ……おばさん……」

骨が、歯の根が、自分の体じゅうが、がくがくと鳴るように、武蔵は思えた。