Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
「うそだい、違うだろ」
城太郎は、ともに駈けてはいるがまだ信じない顔つきで、
「お師匠様なら、おらたちの姿を見て、逃げてゆくわけはない、人違いだろ」
「でも、御覧」
「だから何処にさ」
「あれ――」
遂に、彼女は、発狂したかのような声をふりしぼって、
「武蔵様あ! ……」
道ばたの樹につまずいてよろめいた。そして、城太郎に抱き起されながら、
「おまえもなぜ呼ばないのです! 城太郎さん、はやく、お呼び!」
城太郎はぎょっとして、そういうお通の顔に眼をすえてしまった。――何と似ていることだろう、口こそ裂けていないが、血ばしっている眼、青じろく針の立った眉間、蝋を削ったような小鼻や顎の皮膚――
似ている。そっくりといってもよい。あの奈良の観世の後家から、城太郎がもらって来た狂女の仮面と。
城太郎は、たじろいで、彼女の体から手を放した。するとお通は、その戸惑いを叱りつけるように、
「はやく追いつかなければだめです。武蔵様は、帰って来ない。お呼び、お呼び、私も呼びますから声かぎりに――」
そんな馬鹿なことはあるはずがないと、城太郎は心のうちで否定するのであったが、お通の余りにも真剣な血相を見ては、そうもいっていられなかったとみえ、彼も、精いっぱい大きな声を出して、お通の走るままに走って行った。