Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
(おやこんな所まで、人家があるのか)
と、旅人は一応そこで眼をみはるのが常だった。
しかも戸数は相当にある。川沿いや、峠の中腹や、石ころ畑や、部落の寄りあいではあるが、つい去年の関ヶ原の戦の前までは、この川の十町ばかり上流には、小城ながら新免伊賀守の一族が住んでいたし、もっと奥には、因州境の志戸坂の銀山に、鉱山掘りが今もたくさん来ている。
――また鳥取から姫路へ出る者、但馬から山越えで備前へ往来する旅人など、この山中の一町には、かなり諸国の人間がながれこむので、山また山の奥とはいえ、旅籠もあれば、呉服屋もあり、夜になると、白い蝙蝠のような顔をした飯盛女も軒下に見えたりする。
ここが、宮本村だった。
石を乗せたそれらの屋根が、眼の下に見える七宝寺の縁がわで、お通は、
「アア、もうじき、一年になる」
ぼんやり、雲を見ながら、考えていた。
孤児であるうえに、寺育ちのせいもあろう、お通という処女は、香炉の灰のように、冷たくて淋しい。
年は、去年が十六、許嫁の又八とは、一つ下だった。
その又八は、村の武蔵といっしょに、去年の夏、戦へとびだしてから、その年が暮れても、沙汰がなかった。