Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
「覚えておりませんが」
「あの初めに――笛は五声八音の器、四徳二調の和なりとある」
「笛の先生みたいですね」
「わしは、極道坊主のお手本のようなものじゃ。どれ、ついでに、笛を鑑てあげよう」
「鑑てください」
手に取るとすぐ沢庵はいった。
「ウーム、これは名器だ。この笛を捨子に添えてあったといえば、そなたの父も母者人も、およそ人がらがわかる気がする」
「笛の先生も賞めていましたが、そんなにこれはよい品ですか」
「笛にも、姿がある、心格がある。手に触れて、すぐ感じるのだ。むかしは、鳥羽院の蝉折とか、小松殿の高野丸とか、清原助種が名をたかくした蛇逃がしの笛とか、ずいぶんの名器もあったらしいが、近ごろの殺伐な世間で、こんな笛を見たことは、沢庵も初めてと申してもさしつかえない、吹かぬうちから身ぶるいが出る」
「そんなことを仰っしゃると、下手な私にはよけいに吹けなくなってしまう」
「銘があるの。……はて、星明りでは、読めないわえ」
「小さく、吟龍と書いてあります」
「吟龍。……なるほど」
と、笛鞘や袋とともに、彼女の手へかえして、
「さ。……所望」
と、厳粛にいった。沢庵の真剣な容子にお通もひきこまれて――