Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
七
「では、拙い技でございますが……」
草のうえに坐り直し、作法を正して、笛へ礼儀をする。
もう沢庵は口もきかない、深夜の寂とした天地があるだけで、そこに沢庵という改まった人間はないもののようである、彼の黒いすがたは、この山の一個の岩のようにしか見えていなかった。
「…………」
お通は、唇へ、笛をあてた。
七
白い面をやや横向きにし、お通はおもむろに笛を構えた。歌口に湿りを与えて、まず心の調べから整えているすがたは、いつものお通とも見えなかった。芸の力といおうか威厳があった。
「では……」
と、沢庵へ改まり、
「不束なすさびですが」
「…………」
沢庵は、黙然とうなずく。
呂々と、笛は鳴りはじめた――
彼女の細くて白い指のふしが、一つ一つ、生きている小人のように、七ツの孔を踏んで踊る。
低い――水のせせらぎにも似た音に、沢庵は自分自身が、行く水となって、谷間にせかれ、瀬に游んでいるような思いに引き込まれた。甲の音のあがる時は、魂を宙天へ攫われて、雲と戯れる心地がするし――と思えば、また地の声と天の響きとが和して、颯々と世の無常をかなしむ松風の奏でと変ってゆく。