Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
何も、半殺しにして、他人の酷い目を、たのしむような非道をしなくても」
「これが、わしの病だ」
「ええ、情けない」
「退いていなさい」
「退きません」
「また、強情が始まったな。この女め!」
力づよく振り放すと、お通は、杉の根へよろめいて行って、わっと、そのまま樹の幹へ、顔も胸も押しあてて泣き出した。
沢庵までが、こんな残酷な人とは、彼女は思っていなかった。村の者のてまえ一応は樹へ縛っても、最後には何か情けのある処置を執るのだろうと思っていたのに、実はこういう残虐なことを楽しむのが病だとこの人はいうのだ。お通は、人間というものに、戦慄せずにいられない。
信じぬいていた沢庵までが、嫌な人になることは、世の中のすべてが嫌になるのも同じだった。あらゆる人が信じられないとしたら……彼女は滅失の底に泣き沈んだ。
だが――
彼女は、ふと、泣き顔を、押しあてている樹の幹に、あやしい情熱を覚えた。この千年杉のうえに縛られている人――凛烈な声を天から投げてくる人――その武蔵の血が、この十人の腕でも抱えきれないような太い幹へ通っているような心地がする――
武士の子らしい! 潔い! そして、何という信義のつよい人。