Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
よいかの、皆の者――」
河原の権叔父も五十ちかいし、お杉隠居も五十をこえている。万一、武蔵にでも出会ったら、ひとたまりもなく返り討ちにあうに極っている。――誰かもう三人ほど若い者が従いて行っては――という者もあったが、
「なんのい」
と、婆は首を振っていう。
「武蔵武蔵というが、あか児にすこし毛が生えたような餓鬼一人、何を怖れることがあろうぞ。婆には、力はないが、智謀というものがあるぞよ。また、一人や二人の敵ならば、ここ――」
と、自分の唇へ、ひとさし指を押し当てて、何か自信ありげにいった。
「いい出したら、後へは退かぬおばばのことじゃ、それでは、去になされ」
と、励まして、もう一同も止めようとはしなかった。
「さらばじゃ」
河原の権叔父と肩をならべ、お杉は、中山越えを、東へ降りた。
「おばば。――慥かりやらっしゃれのう」
縁者たちは、峠から手を振って、
「病んだら、すぐに、村へ使いを立てなされよっ――」
「はよう、元気でもどらっしゃれ――」
口々に、わかれを送った。
その声が、背に聞えなくなると、
「のう権叔父。どうせ、若い者より、先へ逝く身じゃ。心やすいではないかの」