Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
漢書がある。またそのうちにも、禅書もあるし、国史もあり、彼のまわりは本で埋まっているといってもよい。
この書物は、すべて、藩の文庫から借用したものである。彼が沢庵から幽閉を申しつかって、この天守閣の一室へ入れられた時、沢庵は、
「書物はいくらでも見よ。古の名僧は、大蔵へ入って万巻を読み、そこを出るたびに、少しずつ心の眼をひらいたという。おぬしもこの暗黒の一室を、母の胎内と思い、生れ出る支度をしておくがよい。肉眼で見れば、ここはただ暗い開かずの間だが、よく見よ、よく思え、ここには和漢のあらゆる聖賢が文化へささげた光明が詰っている。ここを暗黒蔵として住むのも、光明蔵として暮らすのも、ただおぬしの心にある」
と、諭した。
そして沢庵は去ったのである。
以来、もう幾星霜か。
寒くなれば冬が来たと思い、暖かくなれば春かと思うだけで、武蔵は、まったく月日も忘れていたが、今度、天守閣の狭間の巣に、燕が返ってくる頃になれば、それはたしかに三年目の春である。
「おれも、二十一歳になる」
彼は、沈湎と、自分を省みてつぶやいた。
「――二十一歳まで、おれは何をして来たか」
慙愧に打たれて、鬢をそそけ立てたまま、じっともだえ暮している日もあった。