Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
「――騙し討ちに?」
「…………」
叱っと、藤次は眼をもって、清十郎の眼を抑えた。
「……そんな卑怯なことをしては、清十郎の名が立たぬ。たかの知れた田舎武芸者に、怖れをなして、多勢で打ったと世間にいわれては」
「ま……」
藤次は、強いて毅然と装う清十郎のことばへ圧しかぶせて、
「吾々にまかせて下さい。吾々の手に」
「そち達は、この清十郎が、奥にいる武蔵とやらいう人間に、敗けるものと思うているのか」
「そういう理ではありませぬが、勝って、名誉な敵ではなし、若先生が手を下すには、勿体ない、と一同が申すのでござる。――何も外聞にかかわるほどなことでもありますまい。……とにかく生かして返しては、それこそ、御当家の恥を、世間に撒きちらされるようなものですからな」
そんなことをいっている間に、道場に充ちている人間は、半数以上も減っていた。――庭へ、奥へ、また玄関から迂回して裏門のほうへと、蚊の立つように音もなく闇へ紛れてゆくのであった。
「あ。……もう猶予はなりません、若先生」
藤次は、そこの灯を、ふっと吹き消してしまった。――そして下緒を解いて袂をからげた。
清十郎は腰かけたままながめていた。