Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
五
五
そう聞かされてみると奈良へ行くのも、甚だ不気味なことになる。
お通は考えこんでしまった。
奈良に、微かな手懸りでもあるならば、どんな危険をも厭うことではないが――
そういう心当りは、彼女には今の所まるでないのである。ただ漠然と――姫路城下の花田橋の袂からあのまま数年の月日を――旅から旅へ、的なく、彷徨って来たに過ぎない。今も、その儚い流浪の途中に過ぎない――
「お通どのと申されたの――」
彼女の迷っている顔いろを見て、髯侍の庄田が、
「どうであろう、最前から、申しそびれていたが、これから奈良へ行かれるより、わしと共に、小柳生まで来てくれないか」
といい出した。
そこで、その庄田が自分の素姓を明かしていうことに、
「わしは小柳生の家中で、庄田喜左衛門と申す者だが、実は、もはや八十にお近い自分の御主君は、このところお体もお弱くて毎日、無聊に苦しんでおられる。そなたが、笛を吹いて糊口すぎをいたしておるというので思いついたことだが、或は、そうした折ゆえ、大殿のよいお慰みになろうか知れぬ。どうだな、来てくれまいか」
茶売りの老人は、側にあって、それはよい思いつきと喜左衛門と共に頻りにすすめた。